町田の図書館活動をすすめる会よりNHKに対して出された抗議文
                                                    NHK会長                 様
                                                    NHK番組制作局             様
 
 
「クローズアップ現代 ペストセラーをめぐる攻防」(11月7日・木/放映)の取材に対して 私たちは抗議します!!
 私たちは、図書館文化の発展を願って20年来活動をつづけてきた市民団体です。

 11月7日放映の「クローズアップ現代」において町田市立図書館が、著しく客観性を欠き極めて歪曲された形で紹介されたことに市民として憤りを感じ、以下の利用により強く抗議します。


1・町田市立図書館と神奈川県立図書館とが比較されていましたが、住民に直接サービスをする市町村立図書館とこれらをパックアップする役割を担うを県立図書館とを同一基準で論じることは不可能です。番組制作者は現在の図書館ネットワークの基本的理解さえないのではないかと疑わざるを得ません。

2.ペストセラー貸し出しのみの強調は、町田市立図書館の実態を極端に歪める報道です。2001年度を例にとっても、町田市立図書館の貸し出し総数は360万冊余り(図書のみ)、内ベストリーダー100点を合計した貸し出し数は、1.34%、つまり貸し出しされた本の98.66%は、それ以外の書籍なのです。『ハリーポッターと炎のゴブレット』について言えば、対照的図書館として紹介された浦安市立図書館は上下各23冊所蔵、町田の場合は上下各50冊ですが、人口は浦安市の3倍多いのです。(11月17日現在)

3.町田市立図書館は、公共図書館の主要な機能の一つであるレファレンスサービス(市民のさまざまな質問に応える調査サービス)や障害者サーピス、児童サービスなど広範囲こ亘り充実したサービスを行っています。こうしたサービスに対するメディアの無知ぷりはほとんど呆れ果てるほどのもので、情勢を見るかぎりこの番組制作者もその例外ではないように思われます.

 以上、現代の図書館の機能に関する理解もないままに、不十分な調査に基づいて番組が制作されたばかりでなく、あらかじめ素描されたシナリオに沿って「悪役」を演じさせるために町田市立図書館の取材が行われたと判断せざるを得ません。これは、メディアの報道姿勢そのものが問われる問題であり、取材に応じた図書館員の尊厳を著しく傷つけるものであり、私たちは深い憤りを禁じ得ません。「クローズアップ現代」は優れた番組として評価していただけに、今回の放送は残念でなりません。
 私たちはNHKに対して反省と謝罪を強く要求します。

 現在、町田市立図書館をふくむ多摩地域の図書館は、危機的状況にあります。これまで貸し出しや専門性の高い調査などについて、この地域の市町村立図書館をバックアップしてきた都立多摩図書館の蔵書が大量に廃棄され、そのサービスが大幅に削減されようとしております。まさしく時代に逆行する政策であり、この問題こそ、NHKが率先して取り上げて欲しいと願っております。                                                               (2002年11月29日)

                                            町田の図書館活動をすすめる会代長   増山 正子


   NHKから「町田の図書館活動をすすめる会」宛に寄せられた文書
                                                                  平成14年12月16日

「町田の図書館活動をすすめる会」の皆様
                            
                                                          NHK番組制作局(社会情報番組)
                                                              担当部長  
                                                              チーフ・プロデューサー 

省略                                                  

                                                             2002年(平成14年)12月19日

町田市長    寺田和雄様
町田市教育長 山田雄三様

                     NHK「クローズアップ現代ベストセラーを巡る攻防」放映について

                                                          町田の図書館活動をすすめる会
                                                                 代表 増 山 正 子

 平素より、図書館行政に多大なるご配慮とお骨折りをいただいておりますこと、心より感謝いたしております。
 私たちは、<市民の知る権利を保障し、豊かな文化生活を営むために不可欠な図書館>の発展を願って活動している市民団体です。
 こんにち図書館は、少数の限られた人の利用から30年たってやっと市氏の図書館として認知され始めてきました。町田の図書館も、皆様方はもちろん、故浪江先生はじめ多くの先輩諸氏の図書館にかける情熟と運動、そして職員の努力によって、市氏の生活の中になくてはならない大切なものとして定着されつつあります。そんな矢先、NHKの「クローズアップ現代」は、トップクラスの図書館のいくつかを選択し、町田の図書館にベストセラーの複本購入の問題を突き付け、歪曲した形で番組構成をし、放映したのです。
 町田の図書館が、質の良い多面的なサービスをしていることを良く知っている市民は、この番組を見て腹立たしく思いました。私たちは緊急会議を開いて、NHKの局長と取材担当者に宛てて、抗議文を送りました。NHKからはすぐに、話し合いを持ちたいという返事があり、12月11日夜、会員を代表する9名(含む職員2名)が、町田に来られたNHKのお二人(杜会情報番組担当部長とチーフ・プロデューサー)と2時聞半に亙って話し合いました。その席上、NHK側は、「少し早目に来て図書館を見て回ったが、館内の環境といい書棚の配置といい、町田が先進図書館として充実したサーピスをしていることは、ちょっと見ただけでも良く分かった」と言い、ベストセラーの大量購入という役割を担わせる図書館として町田を選んだのは、ちょっと無理があった、と言われました。
 「今回は、文化に公的なお金をどう使うかが一つのテーマで、図書館でのベストセラーの大量購入問題と、市民の要望に応えるきめ細かなサービスを紹介することにあった」とするこの番組は、明らかにベストセラーの複本に悩む図書館に町田、市民の要望に応えるサーピスをしている図書館に浦安と川崎といったシナリオで対照させ、視聴者にインパクトを与えるように構成されたものであることが、お二人の話の端々で解りました。比較対照した浦安市立図書館は、殆どの職員が司書資格を持ち、確かに優秀な図書館ですが、もしこの対照を反対に取り上げたとしても可能なほど、町田も同レベルの図書館なのです。
私たちは、何とかNHKに公的な場で謝罪をしてもらおうとしましたが、番組構成に関しては決して町田を悪役にしようなどという意図はなかったと主張し、話し合いは平行線をたどり、結局、文章での回答を要求しました。
 ここに、今回の放映に関しての私たちの図書館に寄せる熟い思いの見解と動きをご報告すると共に、NHKに宛てた抗議文と、NHKよりの回答を添付させていただきます。
 今後とも、町の文化のバ回メーターでもある図書館の発展に、ご努力下さいますよう願いいたします。

       町田の図書館活動をすすめる会よりNHKに対して出された申し入れ書
NHK番組制作局(杜会情報番組)
担当部長               様
チーフ・プロデューサー       様

                                                          町田の図書館活動をすすめる会

 昨年11月7日(木)放送の「クローズアップ現代ベストセラーをめぐる攻防」について、私どもは11月29目付けの文書をもって、貴局に抗議を行いました。これに対して、早速12月10日(火)に番組制作責任者として、あなた方お二人が町田まで足を運ぱれ、私どもと意見交換を行う場を持たれたことについては、一定の評価をいたします。
 意見交換の場であなた方は、局側にベストセラーの複数騰入を否定する意図はなかったと主張され、万が一視聴者に誤解を与えたとすれぱそのことについて率直にお詫びすると言われました。また、同一本の複数購入が収集すぺき資料範囲を狭めているのではないかという番組の主張に、具体例として町田市立図書館を取り上げたのは誤りであったとも言われました。そして、意見交換をふまえた局側の正式な見解を後日文書で明らかにすることを了承し、確かに12月16日付けのメール文書が私ども宛に送信されて参りました。
 しかしなから私どもは、率直に申し上げて、この文書に大きな失望を感じております。いかにも通り一遍という印象を拭うことができないのです。
 文中には、町田市立図書館を取材した意図として、「ベストセラー複数購入の背景には、リクエスト制度など、きめ細かな住民サービスの姿勢があることを紹介したかった」とあります。本当にそうだったでしょうか。現在でもネット上に流され続けている「放送記録」には、番組内容の要約として「自治体の財政難で予算削滅が続く中、利用者増を図るためのリクエスト制度で、『知の殿堂』から『ベストセラー重視』へと変質した図書館」と書かれています。ここに「クローズアヅプ現代」が今回の放送で意図したことが、明確に表.現されていると思うのですが、いかがでしょうか。
 つまり、リクエスト制度は「きめ細かな住民サービス」としてではなく、単に「利用者増を図るための」制度としてとらえられていたわけです。もっとはっきり言えば、現在の公立図書館に対する貴局の認識は、<自治体財政が厳しい中、利用者増を図るためにベストセラーの大量貸出を行つている公立図書館は、本来の「知の殿堂」という役割に戻るべきではないか>という程度のものだったのではないでしょうか。(私どもの指摘によって、「放送記録」に後から追加されたと思われる※印の文章中に、「市民ニーズを蔵書に反映するリクエスト制度」とあるのは、要約の文章といかにも不整合でむしろ滑稽です。)意見交換の場でも再三申し上げましたが、こうした認識はきわめて表面的で、近代公立図書館の発展の歴史を無視したものです。図書館関係者の中にもこうした発言をする人ぴとがいるのは事実ですが、それはむしろごく一部で、決して広く認知された考え方ではありません。なぜもっとテーマを公平に、また掘り下げて取材できなかったのでしょうか。
 一般市民が自分で考え、判断し、行動するためには、必要な資料や情報を身近で、手軽に、無料で、入手できることが不可欠です。そういう意味で、いまこそ公立図書館の存在が決定的に重要なはずです。ところが、わが国の図書館は、諸外国に比ぺて全く立ち後れているのが実情です。それどころか、現状をもっと引き下げようという動きが、いま全国各地で顕在化しているのです。そんなさなかの今回の放送でした。影響の重大さをお考えいただきたいと思います。
 しかしながら、私どもは今回の間題で、もうこれ以上あなた方とやり取りをするつもりはありません。一度流れてしまった放送は、取り返しがつかないからです。私どもは、日本の公立図書館かさらに発展し、わが国に住むすべての人びとが自由に図書館を利用できるようになることを心から願うものです。そうした立場から、最後に下記の2点を貴局に申し入れます。どうか私どもの意をお汲み取りの上、一日も早く実現してくださるようお願いいたします。

                                   申し入れ事項

1.「クローズアップ現代」の「放送記録」(インターネット上に公開されているHP)の表現を、正確なものに訂正してください。
 
 @「利用者増を図るためのリクエスト制度で、『知の殿堂』から『ペストセラー重視へと変質した図書館」という表勢は、事実に反します。
 A「お問い合わせメモ」で従来は、「利用者のためにベストセラー大量購入をおこなっている図書館」として、町田市立図書館の住所や電話番号が掲載されていましたが、それを削除し新たに※印の文章が追加されたようです。しかし、あれほど大きく取り上げた町田の連絡先を、まったく削除してしまうのは本当に正しいことでしょうか。「利用者のためにベストセラーをある程度複数購入するのも、図書館の重要な役割とする図書館」とでもすれぱ良いことだと考えます。
 B取って付けたような※印の文章など不要です。書くとすれば、「放送後、複数の視聴者から町田市立図書館に宛てて、そのあり方を批判する意見が寄せられました。町田市立図書館は、ベストセラーの貸し出しにのみ力を入れているわけではありません。むしろ貸出冊数や資料費に占めるベストセラーの割合は、ごくわずかなものであることが、データで裏付けられています。放送内容に、無用な誤解を与える表現があった
ことについて、視聴者ならぴに関係各位に深くお詫びいたします。」とすべきです。

2.今後できるだけ早い時期に、同じ番組で、あるいはもっと多くの視聴者が予想される番組で、日本の公立図書館がさらに発展することに寄与するような番組を、ぜひ作ってください。その際には、日本図書館協会はじめわが国の公立図書館の発展のために努カしている団体や個人に、幅広く、公平に取材していただきたいと思います。